『おふろやさんの石鹸』銭湯から生まれる新しい発信のカタチ〜インタビュー
---ゆとなみ社×皆様石鹸のコラボ石鹸『おふろやさんの石鹸』は、ゆとなみ社のプロデュースで2025年9月に発売。若い世代を惹きつける独自の発信力で売れ行きは好調の様子。そんな「ゆとなみ社」の湊社長と鴨川湯 店長兼イラストレーターのさくらさんに、これからの「ゆとなみ社」の取り組みについてインタビューさせていただきました。

(株)ゆとなみ社 日本から銭湯を消さないをモットーに銭湯の継業を専門的に行っています。2015年に「サウナの梅湯」を継業して以来、現在は日本各地10軒の廃業寸前だった銭湯を経営しています。
「銭湯って、実はお客さんに写真を撮ってもらうのがすごく難しい場所なんですよね。」
---インタビューの冒頭で語られた湊社長のこの言葉が、今回の話全体を象徴しているかのよう。日常に溶け込みながらも、外に向けては伝えにくい銭湯の魅力。その壁をいかに越えるのかが、この対話の出発点でした。

それぞれの銭湯の軒先に揺れるのれん。思わず記念写真を撮りたくなる。
SNS時代における銭湯の見せ方について。
ゆとなみ社でも昨年からSNSを専門的に研究する部署を立ち上げ、外部マーケティングの知見も積極的に取り入れています。そんな中で改めて浮き彫りになったのが、「銭湯はお客様自身に写真を撮ってもらうのが難しい」という現実。誰でも簡単に情報を発信できる時代だからこそ、“撮りたくなる理由”をつくることが重要なのではと気付きました。
その象徴が、のれんです。
自社の調査による「鴨川湯では1日平均で7回撮られている」という具体的な数値は、のれんが単なる装飾ではなく、広告媒体としても機能していることを示しています。写真が撮られ、投稿され、拡散される。銭湯ののれんはもはや感覚的な装飾ではなく、広告効果を持った存在なんです。
---SNS時代における銭湯の発信のあり方を、常に現場感覚で捉えている湊社長の言葉にたちまち引き込まれます。

さくらさんデザインの「ゆとなみ社×皆様石鹸」ののれん。社長からよく言われるのは、「やりすぎなくていい。でも、埋もれないように」という言葉。
のれんを『参加型メディア』にする発想とは。
---話題は、のれんの可能性へと広がっていく。
毎回デザインを変えることで、界隈の人たちが自然と反応し、話題が生まれる。さらに、アーティストを起用し、石鹸や銭湯との相性、作家自身のキャラクター、SNSでの発信力までを含めて考えることで、反響は大きく変わってきますし、うまくいけば、僕たちは発信しなくても、お客さんが勝手に広げてくれる存在になります。
---顔ハメのれんや、季節ごとに変わるデザイン、立体的な仕掛け。1枚ののれんに、どれだけアイデアを詰め込めるのか。その発想自体が、銭湯を“体験型の場”へと進化させていく鍵ですね。
ゆとなみ社×皆様石鹸のコラボハンカチ。日常の中で使われることで、ふと銭湯を思い出すきっかけになる。
「楽しいから描いている」
---印象的だったのは、デザインを手がけるさくらさんの言葉。
専門的な美術教育を受けたわけではありません。
銭湯イベントのお知らせを描く中で、「どんなお風呂なんだろう」「入ってみたいな』と想像を膨らませてもらうために絵を描き始めました。
---絵本の表紙のような、やさしく物語のある世界観。
「楽しいからやっている」という純粋な動機が、結果として空間の雰囲気を大きく変えているように思えます。
知識よりも想い。
その姿勢こそが、銭湯という場所に自然と重なっているようです。
石鹸って説明するより前に、まず使ってもらうのが一番なんですよね。
石鹸は“モノ”から“物語”へ
---話題は石鹸へと移る。
今回の石鹸は、自分たちに価格設定も含めて大きな気付きをもたらしました。従来の感覚よりも高めに設定した価格でも、きちんと価値が伝われば選ばれることを実感しています。
香りについても、年齢層による好みの違いが見えてきました。従来の親しみのある香りを好む層と『おふろやさんの石鹸』のようなウッディーな香りに反応する若い世代など興味深いですね。
石鹸はまだまだ遊べる余地があると思います。次は『湯気の香り』など銭湯ならではの表現にもトライしてみたいと考えています。
重要なのは、実際に使ってもらうことですね。常連客がリピーターとなり、自然に広がっていく流れこそが理想だと感じています。
「おふろやさんの石鹸」のプロモーションは石鹸ガチャガチャ!石鹸と双方のデザインシール全6種類の中のどれかが当たる!遊び心あふれる試みが楽しい。
グッズ、イベント
シール、石鹸ケースやハンカチなどのグッズ展開も、お客様から高い反応を得ています。単なる土産物ではなく、背景にあるストーリーやコラボレーションが購入の後押しになっていることがわかります。
今後、銭湯をテーマにした展覧会や絵本のような表現を用いた体験型イベントの構想もあり、実現したいです。まずは自分たちの店舗で実験し、その成果をもとに他の店舗へ広げていきます。
---空間全体で世界観を伝え、体験したあとに実際にお風呂に入る。“続き”を銭湯の中で楽しんでもらうという発想なのですね!のれん、石鹸、イベント、発信、すべてが1本の線でつながり始めていますね。
銭湯のこれからを一緒につくる
「銭湯のことなら、企画から空間づくりまで全部やれる。そんな存在になりたい。」
銭湯を軸に、人、モノ、体験をつなぐ。
---湊社長の言葉からは、銭湯文化を“続ける”だけでなく、“育てていく”覚悟がにじんででいました。